2022 大井ウルトラトラックレース 50,000m プレビュー

国内で類を見ない公認400mトラックでの50,000mのレース(IAU公認)が、12月24日(土)に大井陸上競技(東京都品川区)で開催されます。この大会は2023 IAU 50km世界選手権の日本代表選考レースに指定されています。残念ながら、12月になって当初計画されていた南アフリカでの世界選手権はキャンセルがアナウンスされましたが、IAUは2023年中に代替の50km世界選手権を開催する方向で調整に入っているとのことです。本大会の代表選考の部(陸連・JUA登録者)は男子21名、女子4名という少人数の参加でありながら、国内のみならず国際的にもトップレベルのウルトラマラソンランナーがこぞってエントリーしており、エキサイティングなレースとなることが期待されます。

男子のレースで最も注目されるのは、今年8月にドイツで開催されたIAU 100km世界選手権を6時間12分10秒という好記録で優勝した岡山春紀選手(コモディイイダ)です。50kmは3時間07分(2022年柴又100kmでの通過)という記録があるものの、フルマラソンで2021年に2時間14分台の記録を出していることから、50kmにフォーカスすれば2時間50分前後で走ることが十分に予想され、優勝候補の筆頭と言えるでしょう。

そして、同100km世界選手権にて、日本選手ワンツーフィニッシュを決めた2位の山口純平選手(東京陸協)も、岡山選手と上記の柴又100kmにおいて同時に3時間07分で通過していますが、フルマラソンでも2時間16分台(2022東京マラソン2021)で走っており、岡山選手の対抗となると思われます。さらに、岡山選手のコモディイイダの先輩にあたる児玉雄介選手(サーチファーム・ジャパンRC)も、マラソン2時間16分台(2015)の自己ベストをもち、2022東京マラソン2021でも2時間18分台と力を維持していることから、岡山選手、山口選手に挑む走りが見られそうです。

一方、過去のウルトラマラソンの日本代表経験者が複数エントリーしていることも今大会の特色です。50kmがIAU世界選手権に採用されるようになった初期に日本代表として活躍した岩山海渡選手(奈良陸協)は、2011年に2時間57分29秒という当時の日本最高記録を樹立していますが、40歳になった最近でも2時間24分台(2022)でフルマラソンを走っており、ベテランの走りで上位進出を伺っていることでしょう。また、2003年の初出場から10年以上に渡って100kmマラソンの日本代表に名を連ね、2014年のドーハ大会では4位にまでなった能城秀雄選手(住友不動産エスフォルタ)は、すでに日本の100kmマラソンのレジェンドの一人と言ってよい存在ですが、46歳になった今でも100kmを6時間台で走る力を保っており、2009神宮外苑50kmで出した3時間05分29秒の自己記録の更新を狙ってその健在ぶりを見せてくれることでしょう。また、村戸勇輝選手(ハートブレイク)も日本代表として2019 IAU 50km世界選手権への出場経験をもち、3時間02分46秒を記録しています。

その他、マラソンで2時間30分を切る力をもち、近年は100kmマラソンでも活躍している福元翔輝選手(track tokyo)の初の50kmレースも楽しみです。また、スカイランニング日本代表やUTMFで優勝するなどトレイルレースでの活動が目立つ甲斐大貴選手(JOHHOKU CABALLO)は、ロードのマラソンでも11月末の富士山マラソンにおいて2時間24分台で優勝しており、今回のトラックレースでどのような走りを見せてくれるか興味を引きます。

女子のレースはわずか4名のエントリーながら、うち3名が今年の100km世界選手権の日本代表選手という一層の少数精鋭となりました。特に、上記の世界選手権で7時間19分12秒という日本歴代4位の好記録で6位に入った仲田光穂選手(千葉陸協)が注目されます。仲田選手はマラソンでも2時間40分を切るスピードがありますが、100マイル超のウルトラマラソンにも積極的に挑戦し、12月初旬の24時間走国際大会(台湾)では256km超を走ってアジア記録を更新するなどその適性を見せていて、オールマイティ・ウルトラランナーとしてまだまだ伸びしろを感じさせます。今回は、3週間前の上記24時間走後の回復具合が気になるところですが、100マイル超でも間隔を詰めてレベルの高い走りをしてきた実績があり、その心配も不要なのかもしれません。

男子の能城選手とともに40歳代後半ながらトップレベルで活躍している100kmマラソンのレジェンドとも言える藤澤舞選手(札幌エクセルAC)の参戦も嬉しい限りです。藤澤選手は2008年以降の100km世界選手権に日本代表として皆勤し、50km世界選手権にも4回出場していますが、長年トップレベルでウルトラマラソンを走ってきていながら、近年になってマラソン(2時間35分台)と100kmの自己記録を更新していることには敬服させられます。今回は、100km世界選手権が開催されない2023年において50kmでの世界選手権への出場を視野に入れています。

3人目の2022年の100km日本代表選手の太田美紀子選手(京都炭山修行走)も2010年の100km世界選手権での初代表以来コンスタントに日本代表入りしていて十分にベテランと言えますが、藤澤選手同様、40歳代後半になってもマラソンや100kmの自己記録を更新しています。ロードのみならずトレイルでも日本代表経験があるなど幅広く活躍している選手ですが、今回の50kmにおいてはマラソン2時間44分台(2021)の走力を活かして100km日本代表選手の競演を盛り上げてくれることでしょう。

大会は12月24日(土)午前9:30スタートで、大井陸上競技場のスタンドは無料開放されます。日本トップレベルのウルトラマラソンランナーの白熱のレースをスタートからフィニッシュまでフル観戦できる貴重な機会ですので、ぜひ現地で応援してはいかがでしょうか。