2010 第5回 神宮外苑24時間チャレンジ・ウルトラマラソン レポート

都内の中心部で行なわれる本格的な24時間走個人競技会として定着してきた神宮外苑24時間チャレンジ(主催:神宮外苑24時間チャレンジ実行委員会・24時間走チームJAPAN、共催:JUA、IAU公認)の第5回大会は、昨年と同時期の9月第二週末に開催された。
昨年は恵みの雨のおかげで好記録が続出したが、今大会は皮肉にも開催日前後の涼しく走りやすい天気の間の猛暑日となり、過酷な条件下でのサバイバルレースとなった。

24時間走部門は、今大会からIAU公認の部のみに統一されたが、参加者層に変化はなく、昨年同様に男子42人(海外招待3人、知的障害者1人を含む)、女子8人(海外招待1人を含む)の計50人と定員枠を満たすエントリーがあり、当日は47人が出走した。今大会の注目は、男子では第3回大会の優勝者で今年の世界大会代表の本田正彦選手(M@HIRATSUKA)や、同じく過去2回日本代表経験のある鈴木誠選手(club MY☆STAR)、女子では長瀬陽子選手(築上町陸協)らの実績ある強豪に対して、ほとんど24時間走の経験がないか初めてのスピードランナー達がどのように挑んでいくかという点であった。

男子のレース序盤は、昨年一般の部で活躍を見せた日浦泰博選手(宇部市陸協)が猛暑をものともしないキロ5分を大きく上回るペースで飛び出し、他選手に瞬く間に周回差を付けた。日浦選手はフルマラソンを3時間10分程度で通過するも、その後はハイペースへの警戒感と疲労でペースを落ち着かせていった。8時間もすると、トップ10は本田選手、鈴木選手、昨年も好成績を残した湯川朋彦選手(電通銀輪鉄人倶楽部)、さらに初挑戦の古北隆久選手(多摩川クラブ)や佐川健一郎選手(十勝陸協)などのフルマラソンの走力のある選手で占められ、レース中盤にかけてサバイバルの様相を呈してきた。

一方、女子は11月の100km世界大会代表が決まっている伊藤夕子選手(武蔵UMC)と、2時間31分という全参加者中最高のフルマラソンの記録を持つ江崎由佳選手(九電工)が競り合う展開で、ほぼ一揆討ちとなった。

日が暮れても、むしろ蒸し暑さは増したのではないかと思うほど過酷な気象条件で、続々と途中リタイヤする選手が出てくる中、男女ともに上位に位置している選手は集中して着々と周回を重ねていった。日浦選手は100kmを9時間を切って通過するものの、その後はスピード維持が厳しくなり、13?14時間経過した140km前後あたりでは、それまで守ってきたトップの座を古北選手に譲ることになった。本田選手もしたたかな後半勝負のペース配分で2位に浮上してきた。女子は、100kmをほぼ周回差なく伊藤選手が江崎選手に先行して通過したものの、直後に江崎選手の脚が悲鳴を上げて長時間の休息に入ったため、一気に周回差が開いた。

男子の終盤戦では、若さを活かしたスピードとパワーに優る古北選手が優勝をほぼ手中に収めるとともにS標準の240kmを狙って必死の走りを見せたが、経験不足のためかムラとロスもあって230kmをわずかに超えるにとどまった。終盤の逆転に望みをかけて淡々と走っていた本田選手も最後は大きくペースを落とし、逆に息を吹き返した日浦選手に追い詰められたものの、なんとか220kmオーバーと2位を死守した。

 

RIMG3149ss.jpg女子のレースは、長時間休息のタイムロスを徐々に挽回した江崎選手が16?17時間あたりでいったん伊藤選手を逆転するも、全身の疲労と耐えがたい痛みに苦しんだ。江崎選手は終盤には200kmのクリアのみを目指してひたすら粘り、23時間過ぎに200kmに到達した段階で事実上レースを終えた。一方、優勝した伊藤夕子選手は最後までバネの利いた力強い走りを見せてA標準の210km突破を達成したが、条件に恵まれればさらに上が目指せることは間違いないと予感させた。伊藤選手と江崎選手はともに2011年の世界大会代表内々定となった。

 

RIMG3108ss.jpg24時間走の部は結果的に14人の選手が途中棄権し、33人がレースを全うした。実力、実績のあるベテラン選手といえども、この過酷な気象条件には苦労したことが覗えるが、一方で初挑戦者や経験の少ない選手の健闘が目立ち、新しい力の台頭が印象的であった。

 今大会は、24時間走に併催の神宮外苑ウルトラマラソンもIAU公認を取得し、JUAとしてウルトラマラソンの公認記録を残していく方向性を具現化した。6時間走においては、男子で杉本智哉選手(日テレJC)が厳しい気象条件下としては非常に素晴らしい75kmを超える記録で優勝し、女子は和地朋子選手(武蔵UMC)が苦しみながらも昨年に引き続き二連覇を達成した。12時間走の部では海外招待の台湾選手が活躍し、男子で2、3位、女子でも3位に入った。男子の優勝は今年3月の100kmアジア選手権代表の大島康寿選手(栃木陸協)で、病み上がりで調整不足ながらも他選手を圧倒した。競り合いになった女子は大谷知江子選手(ウィングAC)が逃げ切って優勝した。

 神宮外苑24時間チャレンジおよび神宮外苑ウルトラマラソンは、IAU公認大会として競技面で厳格なルール設定もなされており、確かに一部の参加者の競技レベルは高いが、大半は様々なレベル、年齢層の方々が、自己への挑戦や走り込みトレーニングの一環として参加している。運営スタッフも、時間走ウルトラマラソンを愛好するすべての参加者を歓迎し、そのランニングをサポートすることにやりがいを感じている。今後も実力の如何で敷居を感ずることなどなく、当大会へ積極的に参加する人が維持されていくことが期待される。

■ 24時間走 男子上位成績
1. 古北 隆久(多摩川陸上競技クラブ・東京) 231.977 km
2. 本田 正彦(M@HIRATSUKA・神奈川)  223.769 km
3. 日浦 泰博(宇部市陸協・山口)   221.796 km
(出走39人)

■ 24時間走 女子上位成績
1. 伊藤 夕子(武蔵UMC・東京)   213.932 km
2. 江崎 由佳(九電工・福岡)   200.226 km
3. 長瀬 陽子(築上町陸協・福岡)   184.870 km
(出走8人)

■ 6時間走 男子上位成績
1. 杉本 智哉(日テレJC・東京)   75.582 km
2. 田中 誠(多摩川陸上競技クラブ・東京)  70.278 km
3. 岩崎 良(東京都八王子市)   59.670 km
(出走31人、フルマラソン以上完走19人)

■ 6時間走 女子上位成績
1. 和地 朋子(武蔵UMC・東京)   58.344 km 
2. 土屋 里恵(D.R. AC・神奈川)   57.018 km
3. 山田 佐知恵(多摩川陸上競技クラブ・東京) 55.692 km
(出走11人、フルマラソン以上完走7人)

■ 12時間走 男子上位成績
1. 大島 康寿(栃木陸協)    127.296 km
2. 楊 鴻輝(台湾)    107.406 km
3. 陳 錦輝(台湾)    95.472 km
(出走16人、フルマラソン以上完走15人)

■ 12時間走 女子上位成績
1. 大谷 知江子(ウィングAC・千葉)  92.820 km
2. 原 めぐみ(club MY☆STAR・東京)  91.494 km
3. ? 淑敏(台湾)    75.582 km
(出走5人、フルマラソン以上完走5人)

※ 全成績は こちら をご覧ください。
        (リンク先: http://sports.geocities.jp/jpn24rt/10jg24_resultstop.htm)