2017 IAUトレイル世界選手権 代表選手レース後コメント

【近藤 敬仁】

トレイルランニングの世界選手権は今回が初ですが、スカイランニングでは今まで2度世界選手権に出場、また同じくらいのレベルのレースとしてフランス選手権的レースのトンプリエにも出場していたので、欧米勢の強さはよく解っていました。

その欧米勢に対抗するためにも、自分なりに追い込んだ練習ができていたし、精神的にも良い状態で挑むことができました。4月から部署異動があり、平日は連日残業で朝練のみのような状況でしたが、朝でも追い込んだ練習ができていたのは、仲間の支えがあったからだと思います。土日もポイント練を連続でやれていました。今までより睡眠不足ではありましたが、気持ちが変われば人は変われるんだなーと改めて思いました。

ベスト10入りを目標に挑み、中盤辺りまではいけそうな望みも自分の中でありましたが、最後の登りに想定以上に苦しみ、力及ばす17位という結果に終わりました。10位とのタイム差は概ね6分、失速しなければ掴むことができた場所だし、なんでそこで踏ん張れなかったのかと悔やまれますが、それも僕の心の弱さと実力ですね。

自分が「走る」ということで、日本代表で世界選手権に出場しているということが、考えてみると自分ごときがと不思議にも思えますが、その舞台に挑める事、そこにいたことを幸せに感じました。今回も素晴らしい経験と思い出ができたなと思います。また世界の舞台に挑めることができたなら、その時は今度こそベスト10入りを!!

 

【川崎 雄哉】

今回の世界選手権参加にあたり、色々とサポートしていただいた方々に感謝します。本当にありがとうございました。私にとって初海外、初海外レースということで、不安と楽しみがある中出発しましたが、皆様のおかげで楽しい初海外となりました。

日本代表に選ばれたからにはしっかりと使命感を持ちつつ、トレイルランというスポーツを全力で楽しみながら、今の自分の実力を知るいいチャンスだと思ってイタリアへ入り、これまでのトレーニングを含めた準備もほぼ順調で体調も悪くはなかったので、10位以内に入るつもりでスタートしました。

スタートしてすぐにロードの急登から林道の登りと続き、その後下り基調の前半でしたが、どの選手もスタートからペースが速く、第二集団で進むのがやっとでした。後半は登りが続くことが分かってたので無理しないペースで進み、チームスタッフの高木さんからサポートを受けた約24km地点のASではまだまだ余裕がありましたが、それからの登りで思うように体が動かず、得意の登りで順位を上げる予定が逆に順位を下げ出し、それからはひたすら粘るだけとなりました。でも、キツい中でも他の国の選手とお互いに励まし合いながら走れたことはとても楽く、”トレイルランが好きな人はみんないい人”というのは世界共通でした。

ゴールする時は、九州のトレイルラン仲間からいただいた、寄せ書きの日の丸を掲げてゴールしたいと思っていたので、2人と競り合いながらも日の丸を掲げてゴールできたことは本当に良かったです。結果は4:59’18”で30位で、全く相手になりませんでしたが、本当にいい経験ができました。前半余裕がある中でレースを進めたのに後半動かなくなったのは、まだまだ実力不足だということです。今回のレースで色々なことを感じたので、それを今後にうまく生かせるように、また次の目標に向かって頑張りたいと思います。そして、自分のことを応援してくれた全ての皆様、本当にありがとうございました。

 

【荒木 宏太】

まずはじめに、今回サポートをしていただいた方々、本当にありがとうございました。おかげさまで安心してレースに集中することができました。レースの結果については40位、5時間9分という内容で、体調などの状態に関しては問題無かったと感じます。レース環境としては暑さはありましたが選手皆同じ環境でした。

今回の自分のレースに対する意識は、世界のトップを知ること、そして次に自分の走りをすることでした。スタートしてTNF50で2位の米ハイデン・ホークスやディフェンディングチャンピオンのスペインのルイス・ヘルナンドが先頭グループを形成していました。最初から登りで速いと感じましたが貴重な経験と思い間近で世界のトップランナーの走りを見せていただきました。やはりトレイル世界一を決めるレースとあって、前半からトップは逃げるレースをします。最初の3kmで300m程登り、林道に入っても落ち着くことは無く、逆に走れる林道は体感でキロ3分40秒程のペースで更にペースを上げていました。トレイルで20kmをキロ5分ペースで走っていても世界では20位程度です。最初の20kmでのハイペースで脚を使ってしまい乳酸値が上がりきってそれからは登りが登れなくなってしまい、それからの登りはほとんど歩いてしまいました。トレイルランナーなら分かると思いますが、一度登りを歩き始めてしまい走れなくなるとそれ以上速く走ることはできません。レースで筋力の回復は不可能だからです。

20km以降は何人も抜かれ、何人もの選手とコミュニケーションを取りながら走りました。選手は皆、闘いながらも楽しんでる様子でした。やはりチャンピオンスポーツである以上トップは余裕が無いと思いますが、入賞圏外は自分のレースに徹している様子でした。20km地点前では米ハイデン・ホークスも落ちてきて、世界的に有名なロングディスタンス選手でも(50km程度のウルトラ)トレイルでは通用しないのが伝わりました。23km地点のチームサポートエイドでUF高木さんから水を受け取り、暑さから水を頭から被りました。30km.35km地点での600m.700mの登りはもう身体が動かず、動かしたくても走って登れず、頭ではどうしようもできなくなっていました。そんな時、もっと登りのトレーニングも取り入れるべきだったと反省しました。

40km手前でdogs or caravan岩佐さんに出会い「ここからアップダウン続きますよ」とアドバイスいただき40kmからの林道は軽いアップダウンと下りで得意なコースでしたので最後は少しでも順位を上げたいと思いペースを上げて5人程抜きました。

今回のレースに悔いはありません。どちらかというと得たものが大きいレースでした。最初の3kmは世界のトップを間近で見れ、一般のトレイルランナーが羨む貴重で真剣な場面を見れた幸せ者でした。やはり大きな問題は自分の意識レベルでした。日本のレースで満足するレベルだったということが事実です。まだまだ日本でのレースは走力で勝てるレースがほとんどで、マラソンで2時間30分前後の選手なら活躍できるのが今の日本トレイルの現状です。自分の場合、走力は2時間30分ほどのトレーニングは出来ていました。ただ、登りに対する能力、登坂力については長期的トレーニングとして全く意識できていませんでした。満足してしまうと人は成長できないなと改めて自分の弱さを感じました。自己評価では甘すぎるんです。だからチャンピオンスポーツにとって指導者は必要です。少し話はそれましたが、とにかく大事なのはこれから自分がどうするかだと思います。この経験はこれから伝える使命があると感じました。現在、子供達や一般の方々にも指導者として指導しているので、この経験を沢山の人に伝えていきたいと思います。そして、この素晴らしい競技を広めていきたい。これが自分の率直な気持ちです。

「頭の中ではどうにもならないことを身体で表現しなければならない」

レース中はどうにも出来ないことの方が多いです。経験をし、これからの日常をどう変えるかが鍵です。少し休んだらまた新たな指導とトレーニングに取り掛かろうと思います。本当に日本から沢山の応援をありがとうございました。そして、これからも応援をよろしくお願いいたします。

 

【福地 綾乃】

トレイルランという競技を始めて1年、ちょうど締めくくりがこの世界選手権でした。初海外レースでもあり、長時間の移動、食べ物や文化の違い、時差ボケ、緊張等々、何が一番の原因かはわかりませんが、前日の開会式から体の手先足先がつりだしました。海外レースでは、普段起こらないことが起きると聞いたことはありましたが、まさに「これか」という感じでした。

レース当日は、気にしていても仕方がありませんので水分を多目に持ち、電解質を整える補給食をメインに携帯し、前日のことは考えずにスタートしました。走れるコースで前半は下り基調。後半からは登りが多く、ラスト5kmは下り。自分の能力では、前半に攻めて、後半は我慢、ラストは残りの力を出し切る展開がベターと考え、走っていきました。

ひとつ誤算だったのが、レース半ばである23km 地点の(チームサポート)エイドに到着するまでに、足先のつりが始まっていたことです。気持ち良く通過する予定が、暑さもありこの時点でバテ気味に。今までレース中につる経験はなく、この時点での筋疲労も考えにくいので、恐らく前日からの自身のコンディションの悪さからきたものでしょう。最終的に太股や腹筋と体の中心に向かってつっていきました。リタイアだけはしたくなく、体と対話しながら大事に至らないギリギリの走りでラスト5kmまで進んでいきました。悔しく苦しい後半となりました。

今回の世界選手権では、コンディショニングの難しさを身をもって感じました。大きなレースで自分のベストパフォーマンスをすること、当たり前のことなのですがそれが私には出来ませんでした。無念でなりません。ただ、それを知れたことは大きな収穫ですし、世界の走り、特に登りの強さを目の前で見れたこと、同じゴールに向かって走る一体感、励まし合うやり取り、町全体で盛り上がる雰囲気、どれをとっても最高でした。

JUAの沖山さんには、準備やサポートだけでなく、現地でも海外レースに挑む際のいろはをご教授いただき、非常に感謝しております。自身の競技レベルを引き上げ、今回の反省と学びをいかし、再び世界の場で走りたい、今度は戦いたい!という思いが強くあります。未熟な私が再び世界選手権に出ることは容易くないと思いますが、またその場に立てるよう日々努力していきます。貴重な経験と大きな刺激をありがとうございました。